東京ひざ関節症クリニック新宿院 院長

横田 直正医師

  • ・日本整形外科学会 認定専門医
  • ・日本リウマチ学会 認定専門医

発症するとどうなるのか

変形性ひざ関節症は高齢者に多く見られるひざの病気で、痛みを始めさまざまな症状をもたらします。大好きだった旅行ができなくなった、伏し目がちで家にこもるようになってしまったといった話は、当院の患者さまやご家族からよくお聞きすることです。この病気が直接的な原因となって命を落とすことはありませんが、活き活きと楽しく過ごすことのできる健康寿命を脅かす病気であると言えるでしょう。

症状が悪化していく

変形性ひざ関節症の症状

変形性ひざ関節症は、ひざへの負担が積み重なり、軟骨がすり減ることで発症。少しずつ進行していきます。
特徴的な症状は、ひざの痛みや水たまり(腫れ)です。すり減った軟骨によって、ひざ関節を包む滑膜(かつまく)という組織が刺激され、炎症が起きることが痛みの原因。一般的には病気の進行に伴って重症化していきます。動き始めだけ感じる程度だった痛みも、歩行時や階段の上り下りで頻繁に生じるようになるなど、徐々に悪化していくことが多いでしょう。この他にも、正座ができない、ひざからゴリゴリと音が鳴るといった症状が起きることがあります。

末期になると日常生活にも支障

病名にもあるように、進行に伴ってひざ関節は大きく変形。O脚やX脚が顕著になります。末期になると、ひざがほとんど曲がらない、じっとしていても痛い、歩行ができないなど、日常生活にも大きな支障が出てしまうでしょう。最悪の場合には寝たきりになる可能性もあります。

予防のためにできること

変形性ひざ関節症の発症には、複数の要素が関係しています。そのため完全に予防することは難しいですが、知識やちょっとした心がけ・習慣などがケアにつながる可能性はありますし、もし発症してしまったとしても、進行する速度を遅くすることは可能です。おすすめしたいのは、原因を知ること、運動すること、そして生活を改善することです。

原因を知る

変形性ひざ関節症の危険因子

まず、知識面が重要です。特に大きな要因としては加齢が挙げられますが、それだけではありません。考えられる原因を知って、自分に思い当たるものを一つでも多く取り払うことができれば、そのぶん発症リスクも小さくできる可能性はあるでしょう。
変形性ひざ関節症は、二つに大別されます。一つ目は、はっきりと原因を特定することができないもの。加齢や筋力の衰え、肥満、性別、O脚などが挙げられます。そして二つ目が、過去のケガや病気といった、原因をある程度特定できるもの。過去に負った前十字靭帯や半月板のケガ、関節リウマチ、偽痛風などの病気がその例です。

運動する

変形性ひざ関節症の予防に効果的な大腿四頭筋の運動

原因を知ったら、具体的に対策をします。ひざへの負担が積み重なって軟骨がすり減るのであれば、その負担を軽くすることを考えなければなりません。そこでおすすめできるのが、運動です。
効果が認められているのは、筋トレやストレッチでひざ周りの筋力を鍛えたり、ほぐしたりすること。とりわけ、太ももの大腿四頭筋が重要となります[1]。衝撃を吸収し、ひざ関節を守る役割を果たす大切な筋肉だからです。スクワットのような激しいものでなく、脚を挙げてキープする、曲げ伸ばしを繰り返すといった運動でも問題はありません。ただし、痛みが強いとき、腫れているときなどは無理をしないようにしましょう。

生活を改善する

体重の2〜3倍の負担がひざ関節にかかっている

もう一つの予防法は、生活の改善です。特に肥満の方に関係することですが、体重が1キロ増えるごとに、ひざ関節への負担も2〜3キロ増加するとされています[2]。また、体重が5キロ増加するごとに、変形性ひざ関節症を発症するリスクは36%高まるという報告も[3]。予防のためには減量が必須ですし、肥満を増長させるような生活習慣があれば、改善が必要なのです。
できる限り正座を避ける、洋式のトイレを使うといった、日常生活でひざに負担をかけないための心がけもあるとよいでしょう。

病院ではどんな検査や治療を行うのか

変形性ひざ関節症の患者さまが整形外科を受診するきっかけの多くは、ひざの痛みや水たまりですが、痛みが強い場合には、ある程度まで進行してしまっているケースも多々あります。違和感を感じたら、できるだけ早めに受診をするのが望ましいでしょう。ただ、ひざが痛いからといって、必ずしも変形性ひざ関節症であるとは限りません。そのため病院では、まず正確な診断のための検査から始まります。

検査

問診や触診によって、いつから、どこに、どのような症状があるのかを確認します。
また、整形外科の分野では、レントゲン(X線)による検査が基本です。変形性ひざ関節症の可能性がある方の診察においては、ほとんどのケースで行われるでしょう。ひざ関節の骨の隙間や変形の有無を確認するのが目的で、一般的には骨の隙間が狭くなっているほど、病気が進行しているサインです。進行度はグレードという指標で表され、グレード1は変形性ひざ関節症の疑い、2は初期、3は進行期、4が末期を意味します。

変形性ひざ関節症の進行度を示すグレード

レントゲンに加え、MRI検査が行われることがありますが、これはレントゲンだけで確認できない靭帯、半月板、軟骨などの状態も詳しく確認できるためです。当院でも患者さまにMRI検査をおすすめしており、治療による改善の見込みを事前にお伝えすることが可能となっています。
また、血液や関節液の検査は、関節リウマチの可能性や炎症の程度を調べ、変形性ひざ関節症であるという診断を確定させるのが目的です。

保存療法

変形性ひざ関節症という診断に至ったら治療を開始していくわけですが、身体にメスを入れない保存療法が基本です。先にお話ししたように、肥満や筋力不足といった危険因子があれば、まずはそれらを解消するのが理想的です。体重を減らすための生活改善、ひざへの負荷を減らすため、杖やサポーター、靴のインソールを用いる装具療法なども方法として挙げられます。
そして、筋力トレーニングやストレッチを始めとする運動療法もまた重要です。ただ、痛みのあるときは無理をしてはいけません。痛みに対しては鎮痛薬の処方やヒアルロン酸注射、ステロイド注射といった薬物療法を病院で行うことができますので、主治医に相談してみてください。また、電気治療や超音波治療など、痛みの緩和を図る物理療法を行う病院もあります。症状に応じてさまざまな治療法を併用しつつ、筋力の維持、向上を目指しましょう。
保存療法を的確に行うことで、症状が改善するケースは少なくありません。実際に改善が見られるようであれば、そのまま継続します。

変形性ひざ関節症の代表的な保存療法

運動療法

ひざが痛いのに運動してもいいのかという疑問をお持ちの方は多いでしょう。もちろん、痛みが強いときに無理をするのは良くありませんが、一般的に運動は効果的です。というのも、運動しなくなって筋力が衰えると、ひざへの負荷が増えて軟骨のすり減りが進行し、変形性ひざ関節症の悪化に繋がるためです。それを防ぐには、先にお伝えしたように、筋トレやストレッチなどによってひざ周辺の筋肉の状態を整えることが重要とされています。患者さまの身体の状態によって適したリハビリも異なりますので、病院では理学療法士やトレーナーが、それぞれに合った運動療法を考案し、指導します。

ヒアルロン酸注射

なぜ、ひざの痛みにヒアルロン酸を注射するのかというと、関節の中にある関節液の成分と近いからです。この関節液は、ひざへの衝撃を吸収したり、動きを滑らかにしたりする役割を担っています。しかし、変形性ひざ関節症になると関節液は減少し、ひざの動きが悪くなってしまいます。そのため、関節液の成分であるヒアルロン酸を関節内に直接補給するというわけです。副作用のリスクが低いことや、すぐ日常生活へ戻れること、一定の効果が認められていることなどから、整形外科ではとても広く行われています。
一般的には週に1度の注射を5回ほど行い、効果が見られるようであれば継続します。

ステロイド注射

関節内での炎症が強く、ひざに多くの水が溜まっていると、ヒアルロン酸注射では十分な効果が出ないこともあります。そうした場合にはステロイド注射を行うのも手段です。抗炎症作用を持っており、痛みの緩和に効果を発揮します。
ステロイドと聞いて副作用をイメージする方もいらっしゃるでしょう。実際に、ヒアルロン酸注射よりも行なわれている病院数は多くありませんし、頻度も低いです。ただ、ステロイド注射を行う間隔を3ヶ月以上開け、年に2回までとすれば副作用が起きないという報告もありますので、それほど心配する必要はないでしょう[4]

内服薬・湿布

ひざの痛みが強い場合、抗炎症・鎮痛といった効果を持つ内服薬が処方されることがあります。身体への負担を考慮すると、長期間の服用には注意が必要ですが、ロキソニンなどは痛みの緩和に優れた効果を発揮します。
また、湿布には冷湿布、温湿布などの種類がありますが、患部を冷やしたり温めたりする効果は期待できません。炎症の抑制や痛みの緩和を目的として使用します。

手術療法

保存療法で効果が感じられなかったり、症状が悪化してしまったりする場合、手術療法が検討されます。適応となるのは、関節鏡視下廓清術、骨切り術、人工関節置換術の3つ。変形性ひざ関節症の進行度や患者さまの生活スタイルなどが、手術方法を決める判断材料となります。最近では、手術の進行を助けるシステムやロボットなどの最新技術を導入している病院もあり、精度は高くなっています。

変形性ひざ関節症の手術と適応、メリット、デメリット

関節鏡視下廓清術

関節鏡(内視鏡)と器具を用いて、ひざ関節内に留まっている軟骨片などを除去する手術です。所要時間は1時間程度で、入院も数日で済むことが多いでしょう。数個の穴を開けて行う手術のため、他の2つの手術に比べると身体への負担は格段に小さいですが、症状の一時的な緩和という側面が強く、根治的な方法とは言えません。

骨切り術

ひざの周囲の骨をくさび形に切って、ひざ関節の骨の角度を矯正する手術です。主に進行期の方が適応で、手術時間は1〜2時間程度、入院期間も2週間ほどとやや長めになります。また、切った場所には人工骨を入れて金属で固定しますが、骨と人工骨がくっつくまで時間がかかるため、長期間のリハビリが必要です。こうしたデメリットはありますが、O脚やX脚、痛みの改善に期待できること、骨がくっつけば活動制限がなくなることなどから、重労働やスポーツを続けたい方などに向いている手術と言えるでしょう。場合によっては、人工関節となるのを回避し、この手術を受けて一生を遂げられる方もいらっしゃいます。

人工関節置換術

ひざ関節の損傷した部分を切除して人工物と置き換える手術で、主に変形性ひざ関節症の末期の方が適応です。手術時間は2〜3時間とさらに長くなり、入院期間も3週間ほど必要となります。身体への負担が大きくなるという懸念点はありますが、O脚やX脚は元通りに矯正され、痛みの消失にも期待ができる、優れた手術です。痛みから解放されたことで旅行に行けるようになった、外出が楽しくなったなど、QOL(生活の質)の向上にも期待できます。

手術を希望しない場合の治療法

一般的な保存療法で効果がない場合、手術を決める前にPRP療法や幹細胞治療を検討してみるのもよいでしょう。まだ保険診療ではないため、どの病院でも受けられるわけではありませんが、知名度は高まっているかと思います。手術を避けたいスポーツ選手が受けて話題になるケースが多いですが、手術を受けたくないというニーズは、一般の方でも同様。そうした方でも、PRP療法や幹細胞治療といった、自然治癒力を高める治療法を試すことができるのです。
人間にはある程度の自然治癒力が備わっていますが、それに必要な細胞や成分は関節内にごくわずか。関節の疾患を放っておいて悪化することはあっても、改善することは考えにくいです。PRP療法や幹細胞治療であれば、自然治癒を促進させる成分を関節内に直接投与するという方法をとります。いずれも変形性ひざ関節症に適応可能で、その有効性を示す論文も複数[5][6]。症状の緩和のみならず、場合によっては手術を回避できる可能性もあります。

変形性ひざ関節症の手術を希望しない場合の治療法

変形性ひざ関節症の手術を希望しない場合の治療法

PRP療法

自分の血液から、血小板という細胞を多く含んだ部分(多血小板血漿:PRP)を取り出し、患部に注射する治療法です。血小板が放出するさまざまな成長因子が、炎症や痛みの緩和、損傷した組織の修復に働きます。化学薬品を使用しないため、副作用や拒否反応といったリスクは考えにくいのが特長です。また、注射のみでできる治療ですので、身体への負担が非常に少ないこともメリットと言えるでしょう。

幹細胞治療

身体から幹細胞(かんさいぼう)を取り出して、ひざに注入する治療法です。幹細胞には炎症や痛みを抑える作用があるほか、身体の別の組織になる可能性も秘めており、関節内の環境を徐々に整える効果が期待できます。人工関節や骨切りといた手術のように、ひざを大きく切開することはありません。これはPRP療法も同様ですが、身体への負担を抑えたい方に向いている治療と言えるでしょう。

手術を希望しない場合に検討できる治療法

当院は「注射」による治療を提案

当院では、従来の保存療法でも手術でもない、PRP療法や幹細胞治療に着目。臨床応用や検証を重ね、PRPの効果を高めたPRP-FD注射や、幹細胞を増やして用いる培養幹細胞治療を採用しました。これらのような細胞に由来する治療法は、長く行われてきたわけではありません。研究中のものもあり、たとえはiPS細胞などは、意図しない細胞(ガン細胞など)へ変化してしまうリスクもあります。
変形性ひざ関節症に対する幹細胞治療において、当院は脂肪由来の幹細胞を選択。安全性に関する報告は数多く出されており、副作用のリスクも非常に低いのがメリットです[7]。血液由来のPRP-FD注射については、血小板から放出される成長因子のみを抽出しますので、細胞が悪さをする危険性は考えにくいでしょう。
いずれも、主に注射のみで終了する治療です。ひざの切開や入院は不要ですし、変形性ひざ関節症への有効性も確認しています。また、整形外科学会を始めとする学術の場へ積極的に参加し、さまざまな臨床データを発表してきました。「ひざの痛みを治したいけれど手術は受けたくない」という患者さまに、こういった選択肢もあるのだということをお伝えしていけたらと考えています。

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